「楽々カート」の原型は、病院や通所リハビリに勤務していた時に活用していた前腕支持台型歩行器です。

この歩行器は、使用者が前腕支持台に肘をついて前方にもたれることで、背筋を伸ばして歩くことができます。

実際に通所リハビリで円背姿勢を呈するパーキンソン病患者の歩行訓練に活用してみると、立位姿勢が改善し歩行スピードも数段に速くなりました。

この患者は、すり足歩行が顕著で転倒リスクがあったことによりあまり歩かずに通所生活を送っていました。

しかしこの歩行器を用いれば、しっかり背筋を伸ばして安全に院内を歩くことができました。

同時期に、あるスーパーに買い物に行った時、そこでショッピングカートにもたれかかって歩く1人の高齢者が目に止まりました。

よく観察してみると、両下肢がO脚で膝に痛みがある様子でした。

このような姿を見てしまうと、職業柄なのか変形性膝関節症を疑ってしまいます。

その高齢者がショッピングカートのグリップ部分にもたれるようにして、膝の痛みを紛らわしながら歩く姿に

「商品をゆっくり選ぶことが出来ず、なんとか必要なものだけを買っているかもしれない。本来楽しいはずの買い物が痛みによって楽しめてないのではないか」と思いました。

この時に「前腕支持台型歩行器とショッピングカートを融合させたカート」があれば、膝や腰が痛い人でももっと買い物が楽しめるのではないかとアイデアがひらめいた。

そこで生まれたのが現在の楽々カートです。